お念佛からはじまる幸せ

2019年3月5日火曜日

日々是好日

新潟刑務所所属新潟県教誨師会『日々是好日』Ⅱー教誨師がつづった受刑者向けコラム
第99話 日々是好日
日々是好日というと武者小路実篤氏の色紙を思い出す。あちらこちらのご家庭の、玄関先や居間、応接室などに飾られていた。野菜の絵などが、日々是好日の字に添えてあり、氏の独特の字体とともに、一種ほのぼのとした世界を作り出すところが、世に親しまれるゆえんであろう。
この色紙とともに、なぜか私は、若いころに、教科書で読んだ、有名な外国の詩人の言葉を思いだす。
     あげひばり空になき 神天にしろしめす すべてこの世はこともなし
そのような詩であったか、字句の記憶は怪しい。うん。生きているのも、悪くないぜ。そんな感想を懐いたことも、思い出になつかしい。
ところが世の中、それほど甘くないというか、厳しいというのか、実際は、日々是阿修羅のように、なかなかに、恐れ多い。
これを書いている、平成22年二月六日、新潟県は今年一番の寒波に見舞われて、寺の消雪パイプが故障した。腿までの雪をこざきながら、手動で、ポンプを作動させる。自然は厳しい。
世間も厳しい。相撲はもはや国技とは言えず、国際技となった。横綱といえば人もうらやむ大出世だろうに、名古屋場所中に大阪の新地を徘徊するほどの遊び人は、横綱の地位など、なにほどのものではないらしい。日本の国籍を取れば、親方にもなれようものを、それとて未練なく、ポンと捨ててしまった。
横綱引退の号外が出た日の夜、テレビではモンゴルの首都のマンホールから地下で暮らす子どもたちを取材した映像を流していた。
「マンホールチルドレン」というらしい。かつて「チャウセスクの子供たち」という言葉もあった。政治の貧困は、弱者を直撃する。
さりとて、なにかというと、自分のことはさておき、お前が悪い、世の中が悪い、世間が間違っている、環境がいけない、国家が冷たい、地球がせまい、宇宙がーーーー。
運や才能や時代のせいもあるだろうが、人として最低限の努力は続けなければ、進歩がない。
非才浅学を顧みず、宗務庁から特定布教師の辞令を戴いてからもうすぐ一年になる。小職なりに、教誨師の仕事をつとめさせていただいている。
ぺぺ(女性二人歌手)の心に染みるデュエット
  「♪♪せいいっぱいを 精一杯を 教えてくれて ありがとう♪♪」
は聞くたびに涙がでる。そうだよね。せいいっぱいみんな生きているんだよね。
  「♪♪元気だせよ 涙をふいて 元気出せよ 笑ってごらん 元気だせよ♪♪」
私の下手な講釈よりも、一期一会で一時間の時間空間を一緒に過ごして下さる仮釈放まえのみなさんの心にとどかないかなあと考えて、ぺぺさんには無断で(著作権はどうなるのだろうか)曲を使わせていただいている。
ホームページからぺぺさんへ、CD勝手に使わせていただくことの、ご了解をいただかなくてはならない。メールを打とう。きっと、そういうことならいいですよと言って下さるにちがいない。
なかなか、娑婆からはうかがうことのできない塀の中の生活を、書物という想像のなかでしか追体験できないものにとっては、月一回の、桂才賀師匠のお言葉をお借りすれば、「通い懲役」は貴重な体験である。到着した私を案内してくださり、お昼をいただき、部屋へ案内してくださり、規律礼の号令をかけ、一時間私の教誨のために、準備していただく刑務官の先生がたへの、感謝の言葉は尽くせない。

               日々是好日Ⅱ 平成24年6月20日 発行
                  発行人 新潟県教誨師会

















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